浄土真宗の写経|しない理由と、それでもやりたい人へ

写経を書くイメージ

うちは浄土真宗なんですが、写経をしてもいいんでしょうか

こういう質問をもっておられる方がいるかと思います。浄土真宗は他の宗派と少し違う、という話を聞いたことがあって、写経がOKなのかNGなのか、確認してから始めたい。そういう気持ちだと思います。

結論を先に言います。浄土真宗は、写経を修行や功徳を積む行為として位置づけない宗派です。ただ、「だから一切やってはいけない」というわけでもありません。実際に写経会を定期開催している浄土真宗のお寺もあります。

この記事では、浄土真宗と写経の関係をお伝えした上で、それでも写経をしたい方のための選択肢を整理してみます。

この記事でわかること
  • 浄土真宗が写経をしない理由(宗派の考え方)
  • 「写経をしてはいけない」わけではない、という話
  • 浄土真宗で写経するなら何のお経を書くか
  • 実際に写経会を開催している浄土真宗のお寺の例
  • 自宅で写経を始めたい方へのアドバイス
目次

浄土真宗は「写経をしない」宗派

「自力修行」を認めない、という立場

浄土真宗の根本にある考え方は、阿弥陀如来の本願(他力)によってのみ救われるというものです。

私はお坊さんではないので、私にはちょっと説明のニュアンスが難しいところもありますが…、一応参考までにと思って読んでください。

親鸞聖人が確立したこの立場では、自分の力で善いことを積み重ねることで救われようとする、自力で功徳を積もうとする立場をとりません

ただこの「他力」というのは、一般的に現代でよくつかわれているような「他力本願=人任せ」とはまた意味が違います。浄土真宗のお寺でも「あれは使い方が間違っていますよ」とはよく言われます。

「他」というののは、阿弥陀如来のことですが、「自分の力ではない、阿弥陀如来の本願の力」というのが本来の意味です。

「自分」というのは、「煩悩具足の凡夫(ぼんのうぐそくのぼんぶ」つまり「煩悩を抱えたまま、自分の力ではどうやっても救いに到達できない存在」なのだから、自分で何かを積み上げて救われるというルート自体がそもそもありませんよ、ということです。

じゃあひたすらに阿弥陀如来を信じればいいのか、というとそういうわけでもなく、(ここが浄土真宗の理解が難解なところ…。)「信じよう」と頑張った瞬間に、それはもう自力になってしまうので、親鸞聖人は「その『信じる』自体も、阿弥陀如来から賜ったものだ」と言っています。

親鸞聖人は、阿弥陀如来の本願を「難度(なんど)の海を渡す大船」に喩えていますが、要するに荒海を自力で泳ぎ切るのは無理で、でも気づけば船は既に来てくれているんですよ、という世界観ですね。

「自分」という存在の捉え方が、非常に深いなと思います。

話が長くなりました。

写経は、一文字一文字を丁寧に書き写すことで功徳を積む行為として他宗派では広く行われています。しかしこの自力で「功徳を積む」という発想そのものが、浄土真宗の教義と合わないわけです。

そのため、浄土真宗(本願寺派・大谷派)では、基本的には写経は宗派の正式な勤行や修行として位置づけられていません。

他宗派のお寺で写経体験が広く一般にも行われているのに対し、浄土真宗のお寺で写経会が圧倒的に少ない理由はここにあります。

「禁止」ではなく「推奨していない」

ただし、「浄土真宗では写経をしてはいけない」というルールがあるわけではありません。

教義の立場として自力修行を重視しない、ということと、個人が写経を行うことへの禁止は、別の話です。

「功徳を積もうとして」ではなく、経典の言葉に触れる学びや、心を静める時間として写経を行うことは、浄土真宗の中でも否定されるものではないと考えられています。

実際に、浄土真宗のお寺が定期的な写経会を開催している例もあります(後述します)。

浄土真宗で写経するなら、何のお経を書くか

仮に浄土真宗で写経をするとして、般若心経を書くのは宗派の経典との関係から見るとあまり自然ではありません。(別に悪いわけではなく、般若心経を書いている方も普通にいます。)

般若心経は主に真言宗・天台宗・禅宗系の宗派で読まれるお経で、浄土真宗の勤行では使われません。

浄土真宗のお寺では般若心経を唱えることもないため、自分の宗派の経典と合わせる、という視点から見ると、別のお経を選ぶ方が自然です。

正信偈(しょうしんげ)

浄土真宗で日常のお勤めに最もよく読まれるのが、正信偈(しょうしんげ)です。

これは厳密にはお経(経典)ではなく、親鸞聖人ご自身が著された偈文(げもん)で、「正信念仏偈」ともいいます。(お経=説法、偈文=詩)

親鸞聖人の主著『教行信証』の「行巻」末尾に収められたもので、七言・百二十句・八百四十字からなる漢詩の形式で書かれています。。蓮如上人の時代以降、朝夕のお勤めで読誦されるようになり、宗派にとって最も身近な聖教(しょうぎょう)のひとつとなっています。

例えば奈良の淨教寺(浄土真宗本願寺派)では、毎月定例の写経会でこの正信偈の写経を行っています。浄土真宗ならではの経典を書き写す体験として、実際に行われている事例ですね。

讃仏偈(さんぶつげ)・重誓偈(じゅうせいげ)

同じく浄土真宗のお勤めで読まれる偈文として、讃仏偈(さんぶつげ)と重誓偈(じゅうせいげ)があります。

いずれも、浄土真宗の根本聖典である『仏説無量寿経』の中に収められた偈文で、法蔵菩薩(後の阿弥陀仏)が世自在王仏の徳を讃えたり、四十八願の要を重ねて誓ったりした内容です。

奈良の淨教寺の写経会でも、これらを書写するコースも設けられています。正信偈より短く、写経の入り口として取り組みやすいという特徴があります。

浄土真宗のお寺で写経会を開催している例

前述の通り、浄土真宗で定期的な写経会を開催している寺院は多くありませんが、実例として紹介できるのが奈良の淨教寺(じょうきょうじ)です。

項目内容
寺院名淨教寺(じょうきょうじ)
宗派浄土真宗本願寺派
所在地奈良県奈良市
写経会の頻度毎月第2水曜日
開催時間13:30〜15:30(120分)
書写するお経讃仏偈・重誓偈・正信偈
予約お問い合わせフォームよりご確認ください
公式サイトjoukyouji.com

お手本には書道家・北垣元康氏の書が使われており、浄土真宗の写経会として丁寧に設計されています。奈良公園・興福寺・東大寺にほど近いエリアにあり、奈良観光と組み合わせる形でも訪れやすい立地です。

参加を検討される場合は、事前に公式サイトでご確認ください。料金・詳細な予約方法については、直接お問い合わせいただくのが確実です。

※掲載情報は執筆時点のもの。訪問前に公式サイトでご確認ください。

自宅で写経を始めたい方へ

「お寺の写経会には行けないけれど、自宅で写経をやってみたい」という方もいると思います。

何を書くか

自宅で写経をするなら、正信偈・讃仏偈・重誓偈のいずれかを書き写すのが浄土真宗らしい選択です。ただ、写経用紙や手本が市販されているのは圧倒的に般若心経が多く、浄土真宗系のお経の写経用紙はすぐに入手できないことがほとんどです。

現実的な方法としては、

  • 菩提寺に相談してお手本の用紙を分けてもらう
  • 浄土真宗の経本を手元に置き、それを見ながら自分で書き写す
  • 「写経とは何か」「経典の言葉に触れること」という意味で般若心経を書き、功徳を積む目的ではなく心を静める時間として使う

最後の選択肢については賛否があるかもしれませんが、「修行として功徳を積もうとするのではなく、自分の心を整えるための時間として」という文脈であれば、浄土真宗の教義と大きくは外れないという考え方もあります。

迷うようであれば、菩提寺のご住職に相談してみるのが一番です。宗派の考え方と自分の気持ちを正直に話した上で、どう向き合うかを聞いてみるのが誠実な方法だと思います。

道具について

自宅で写経を始めるために揃える道具は、他宗派の写経と変わりません。最低限は、筆ペン写経用紙があれば始められます。

本格的にやるのであれば、硯と墨、小筆で行うとまた違った雰囲気が味わえます。

初心者には、筆ペンと用紙がセットになったものが使いやすいです。なぞり書きができる用紙付きのセットなら、書き慣れていない方でも始めやすいと思います。

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まとめ

浄土真宗と写経の関係を整理すると、こうなります。

  • 浄土真宗は「他力本願」の立場から、功徳を積む自力修行としての写経を推奨しない
  • ただし「写経を禁止している」わけではない
  • 写経をするなら般若心経より、正信偈・讃仏偈・重誓偈が浄土真宗らしい選択
  • 奈良の淨教寺では、浄土真宗の経典を書写する定例写経会が実際に行われている
  • 自宅写経については、目的・意味合いを自分の中で整理した上で。迷えば菩提寺に相談を

写経は、お寺の種類や宗派によって、書くお経も、写経会の有無も、考え方も変わります。写経全体の基礎については、以下の記事にまとめています。

【完全ガイド】写経とは?意味・種類・始め方をまるごと解説

よくある質問

浄土真宗でも般若心経を書いていいですか?

禁止されているわけではありませんが、般若心経は浄土真宗の勤行では使わないお経です。「功徳を積む修行として」ではなく、「心を整える時間として」という文脈なら大きくは外れないという考え方もありますが、迷うようであれば菩提寺のご住職に相談されることをおすすめします。

正信偈の写経用紙はどこで手に入りますか?

市販の写経セットには般若心経用が圧倒的に多く、正信偈の写経用紙はほとんど流通していません。菩提寺に相談してお手本を分けてもらうか、淨教寺のような浄土真宗の写経会に参加して用紙を入手するのが現実的な方法です。

浄土真宗のお寺で写経体験はできますか?

定期的な写経会を開催している浄土真宗のお寺は少ないですが、奈良の淨教寺のように毎月開催している例もあります。体験を希望する場合は、菩提寺や近くの浄土真宗のお寺に問い合わせてみるのが確実です。

浄土真宗は御朱印もいただけないのですか?

浄土真宗は基本的に御朱印を出しない方針の寺院が多いです。御朱印は「参拝の証・写経を納めた証」という意味合いがありますが、浄土真宗の教義とはなじまないためです。ただし、すべての浄土真宗寺院が一律に断るわけではなく、寺院によって対応は異なります。

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この記事を書いた人

奈良で育ち、母が毎朝仏壇の前で般若心経を唱えるのを聞きながら育ちました。子供の頃は習字教室に通い、筆は身近なものでしたが、写経を自分で始めたのは30代になってから。都内IT企業での激務と、眠れない夜が続いた頃、ふと筆を手に取ったのがきっかけです。

1枚書き終えた後の静けさが忘れられなくて、それから5年。写経は私の暮らしに欠かせないものになっています。

このサイトでは、写経を始めたい方に向けて、道具の選び方からお寺での体験まで、実体験をもとに丁寧にお伝えしています。「難しそう」と思っている方にこそ、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

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